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開催場所―セブンイレブンいわき豊間店について

セブンイレブンいわき豊間店といえば、豊間海岸に近く、夏になると店頭に浮輪やビーチボールが並び、サーファー用品も販売するなど、海のコンビニならではの雰囲気をもっていた。

しかし今回の震災ではその近さが災いし、大津波が店舗を大破。乗用車が壁を突き破り、今もどこかの家の玄関ドアが店の天井に乗っている。

平成7年に開店させた店だった。パート店員が全員無事だったのがせめてもの救い。商品は1.5km先の田んぼまで流され、金庫ごと売上金を盗まれた。3人の子供を抱え、店長は鉄骨をさらした店の前で呆然とするしかなかった。

だが震災から2カ月。店長は立ち上がった。その店舗の前に本部から借りた移動販売車を置いて、再起の第一歩となる店頭販売を来週9日から始める。店の一角に、大津波でも倒れなかった壊れかけた公衆電話がある。そこに営巣した小鳥が5つの卵を産んだ。それは、店長夫妻と3人の子どもたちの吉兆に違いない。

2011.05.07 いわき民報より

●イベント開催によせて

僕がこのセブンイレブンいわき豊間店を知ったのは、福島県を取材中の5月中旬のことでした。ツイッターでいわき在住の人たちから「いわきの被災地取材するなら豊間のセブンイレブン見た方がいいよ」と教えられた僕は車を飛ばし、セブンイレブンに向かいました。

「つらいことはたくさんあるけど、ここで楽しいことをたくさんやって、楽しいことでつらいことを上書きしたいんだ」

セブンイレブンの金成店長が突然のアポなし取材に来た僕に言った一言です。お店の取材を終えたあとも、この一言が僕の中で強く印象に残っていました。

震災後、渋谷慶一郎さんと七尾旅人さんから、別々に、まったく同じオーダーをもらいました。それは、「福島の被災地を見て、その場で音楽を奏でたい。でも、自己満足でやるのではなく、僕らが向こうで音楽を奏でる必然性を作ってほしい」というものでした。

金成店長を取材後、いわき出身で現在も在住しているアーティストのYDMさんに会い、どのような形なら渋谷さんや七尾さんの求めている形のライブイベントができるか相談しにいきました。その話し合いをしている最中に、「あれ? よく考えたらライブをあのセブンイレブンでやってしまえばいいんじゃないか?」という天啓が降りてきたのです。

翌朝、セブンイレブンに向かった僕は金成店長にライブイベントの構想を告白。店長は二つ返事で「面白いね! やろうやろう!」と快諾してくれました。

そうして始まったのがこの「SHARE FUKUSHIMA」です。

今回のイベントのコンセプトはシンプルです。一流のアーティストたちが共演するパワーを具体的に被災地の復興につなげる。そして、イベントをきっかけとしてセブンイレブンいわき豊間店を「楽しいことが集まる場所」にするということです。

限られた時間の中で、準備もまだまだ十分ではありません。イベントがどういう形になるかは自分でもわからない部分がありますが、それでも成功させたいと思っています。ぜひ、多くの人に実際に現場に足を運んでもらって「楽しさでつらいことが上書きされる」瞬間を見てもらいたいと思っています。

津田大介

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